蕨で出会ったクルドの歌② 全文はこちら
【光 空 言葉】
ボランティアの日本語教室に通うクルド人の子たちが書いてくれました。11月に行うユーラシアンオペラ新作の舞台美術などに用いる予定です。
すこし掠れ、すこし巻き舌な声で、習ったから書けるよ、と自慢げに競うように。その声にも、受け継がれてきた言語の響きの痕跡。そこにいた友だちやきょうだいの名を呼ぶ声は、さらに煌めきを増して聴こえます。
もともと山地や牧草地に暮らしてきた民族だからか、彼ら彼女らの母親世代に聞くと、上に広がる空、月、星などの語を生まれた子供に名付けることも、よくあるそうです。
カタカナや平仮名で丁寧に署名もしてくれます。中学生の子が、自らの名前を色を使って文字アートのように描き始めると、小さな子たちが真似をし始め、いつの間にかお絵描きタイムになっていました。
しかし名前入りの絵は公表することができません。万が一SNSなどで、トルコ政府や日本の入国管理局のチェック入ると、彼らや家族の身に危険が生ずる恐れもあるそうです。
そうだ、クルド人女性グループも参加してくれる11月の公演では、夜空の星に呼びかけるように、彼女たちにクルド人の名前を言ってもらおう。女の子の名前が良いだろうか。一緒に演奏したり踊ったりする私たちのファーストネームもそこに織り交ぜてもらおうか,,
(後に彼女たちに尋ねた、クルド人に多い名前と意味)
<女性>
Arjin アルジン: 生命の火
Ronahi ロナヒ:イリュミネーション
Evin エビン: 愛
Rojhat ロジュハット: 日の出
viyanビヤン: 強い望み
Zeriya ゼリヤ: 冷たい風
Rojda ロジダ: 日の出
Gule ギュレ: 薔薇
<男女ともに>
Beritan ベリタン:勇気のある人
Adar アダル:高貴な王女
Roni ロニ: 新しい光
Dicle ヂチレ: 大河(チグリス川)
Zana ザナ:学者 賢人
<男性>
Renas レナス: 指導者、開拓者
Miran ミラン: 指導者 王
Renan レナン:神の光
書いてくれたクルドの子らが、子を産んだり育てたりするころ、この子たちはどこにいるのでしょう。彼らはその子らに、どんな響きを伝えるのだろう。そして語の響きのいくつかは失われているのでしょうか。
ついさっきまで懸命に書いていたのにもう飽きてしまった、10歳くらいのやんちゃそうな男の子に求められてカードゲームをしました。彼の家庭内みなではそう使っているのでしょう、私のことを人懐こく「あんた」と呼びます。お喋りしながらふと思い出しました。
私はある時まで、七を「ヒチ」と言っていました。湯船から出る合図を歌うように数える母からはそう教わったのです。小学校に上がった頃、先生に「シチ」だと直されました。恥ずかしくて、もちろんその後「シチ」と言うようになりました。子供ながらなんとなく母に悪いと思い、直されたことはしばらく言いませんでした。だいぶたってからそれを伝えましたが、現在は90近くになった母は、その後もずっと「ヒチ」のまま。
正しいことば、「正しい」とはなんだろう。書いてくれたクルドの子らが、子を産んだり育てたりするころ、この子たちはどこにいるのでしょう。彼らはその子らに、どんな響きを伝えるのだろう。そして語の響きのいくつかは失われているのでしょうか。
実際の公演(2022年11月)についてはこちらをお読みください
「蕨で出会ったクルドの歌」 全文はこちら
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名無し (日曜日, 24 3月 2024 14:16)
クルド人が迫害されてないイスラム教国トルコに行けばいい。土葬、多妻制、生保などを求めてくるに決まっている。