ウクライナのラメント

ウクライナ出身の歌手アーニャ・チャイコフスカヤのロシア正教の祈祷歌とウクライナ民謡「可哀想なカモメ」(子供を失った母のラメント)。2018年に東京で行った音楽詩劇研究所ユーラシアン・オペラ公演からの抜粋。

演奏は、

 

アーニャ・チャイコフスカヤ(歌)八木美知依(箏)ヤン・グレムボツキー(ヴァイオリン)小森慶子(クラリネット)小沢あき(ギター)河崎純(コントラバス)

 

人々の心身が傷つくことを思うとやりきれません。映像には2017年にウクライナのオデッサの美術館で、ウクライナ、ロシアのダンサーと創作したときの写真があります。そのとき「もしも戦争がなかったら」という企画展の展示室を楽屋として案内された。2014年以降にロシアとの衝突で戦死したウクライナ兵の無数の肖像画。日常の姿と軍服を着た姿が並列して描かれていた。ウクライナやロシアのダンサーとともに準備、待機する楽屋としてそこを選ぶことができず、別の場所を探してもらった。当時、もし彼らに尋ねていたら、あまり気にせずに使ったのかもしれなかったが…

 

日本で、現地ウクライナやロシアの人々、大切な友人たちの「嘆き」を理解することも簡単なことではない。

 

東西冷戦構造が崩壊して久しいが、たとえば、冷戦後に顕在化した中東問題や、現在のロシア・ウクライナ関係、それをめぐる世界情勢のなかで、日本人はまだ「西側」の一国家の眼差ししかもてないでいる。私自身もそうだと思う。ユーラシア大陸の音楽家、アーチストとのコラボレーションは、彼ら、彼女らの死生観を知りながら、それをもつためでもある。

 

現在はウクライナ領内にあるルーマニアで生まれ、ホロコーストに直面したユダヤ人、パウル・ツェランの詩。

これからもウクライナやロシアの人々とともに歌を探します。

 

「糸の太陽たち」(訳:飯吉光夫)

糸の太陽たち、

灰黒色の荒蕪の地の上方に。

ひとつの

樹木の高さの想いが、

その光の色調を

とらえる――

まだ歌える歌がある、

人間の

彼方に。

 

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