ユーラシアンオペランはこれまで、海外でのコラボレーションや上演をふまえて、新たな作品を創作してきた。しかし2020年から着想された本公演では、海外から日本への移民者、移住者との交流を踏まえた共生空間をめざした。
「コロナ禍」により新宿区を超え、埼玉県川口市や蕨市周辺に暮らす在留外国籍者数が、最多となった。本作では、とりわけトルコから移住するも難民認定を受けられず、移動の自由も制限されている在日クルドの人との交流の場となることを願い、会場全体を架空の「広場」と想定した。観客とともにそれを創生するのが、“ユーラシアンオペラ”という空間だ。
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階級社会において虐げられたまつろわぬ民の魂が、たった数行の詩を10分以上かけて歌う、静けき声に憑依する。韓国から伝統音楽「正歌」の歌手ジー・ミナを招き、上演は韓国伝統文化パンソリの代表演目「春香伝」と、ユーラシアンオペラ各地の現代詩をコラージュした詩劇の二部構成。もう1人のソリストは、台湾原住民族タイヤルに出自を持つ歌手のエリ・リャオ。ゲストには、異郷に暮らしながら故郷の歌を歌い継ぎ、文化や言語を伝承を願う、三人の在日クルド人女性。公演は埼玉と東京で行ったが、彼女たちは法制度により東京公演には参加できなかった。