Op.2 さんしょうだゆう(2019)

ユーラシア版現代の「青い鳥」

日本、韓国、ロシア、カザフスタンのアーチストが結集した国際プロジェクト。中世より伝わる日本の口承芸能「さんしょうだゆう」が、韓国、中央アジアの神話や伝説と接続し、近現代へと舞台を移して現代に甦らせた日本未上演作品。2019年カザフスタンで初演、同年韓国で改作上演された。

 

データ& 写真

 

一家の離散を描くストーリーには1910年ごろより朝鮮半島から、貧困や抗日のため極東ロシアに移住した「高麗人」の来歴が重なる。人々は1937年のスターリンによる迫害で中央アジア各地に離散した。それは参加したロシアのダンサー、アリーナ・ミハイロヴァの家族のルーツ。実際にカザフスタンで高麗人の居住集落を彼女とともに訪ねたドキュメント映像を交えて創作された。

 

音楽は河崎純作曲による室内楽や歌。歌唱ソリストはシベリアの歌姫マリーヤ・コールニヴァと韓国国楽の正歌のジー・ミナ。ロシアの伝説的な前衛音楽家セルゲイ・レートフのサックスによる即興演奏、中央アジアシャーマニズムや伝統音楽を現代に甦らせるカザフスタンの音楽集団「Turan」からコブス、ドンブラ奏者ヌルヒャン・ラフムジャン、韓国打楽器のチェ・ジェチョルによるアンサンブル。さらに日本の舞踏や能楽、伝統神楽などの要素が加わり、現代の音楽劇として再現された。

ゲストソリスト

ジー・ミナJi MinAh

韓国)

李朝時代に築かれ、永遠を願う悠久の歌声。韓国の国楽、正歌の若きホープ

マリーヤ・コールニヴァMarya Korneva

(ロシア)

広大な自然と、ロシアの知を継承するイルクーツクに育ち、様々な音楽、演劇、映像のプロジェクトとコラボレートするシベリアの歌手。ロシア正教古儀式派の出自も持つ

セルゲイ・レートフSergey Letov

サックス・リード(ロシア)

 ペレストロイカ期よりロシアの前衛ジャズを牽引する博学のマルチ・リード奏者。祖父はカザフスタン解放運動に関与した


アリーナ・ミハイロヴァAlina Mikhaylova

ダンサー(ロシア)

サンクトペテルブルクを拠点に、即興、コンテンポラリーダンスの中心人物として活動。コリアンディアスポラの出自を持つ

 

 

チェ・ジェチョル(韓国打楽器)

日本と韓国の文化に触れ叩き歩く、アジアンビートの伝道師。在日コリアン3世の出自を持つ

ヌルヒャン・ラフムジャン

ドンブラ・キル・コブス(カザフスタン)

カザフスタンの伝統音楽を新感覚で演奏する国民的グループTURANの若手メンバー



ソ連時代の原爆実験でできたカザフスタンの人工湖に訪れたのは、韓国から旅行中の若い兄妹。

 

湖畔でまどろむ兄の夢のなかに鳴り響くのがユーラシアンオペラ版「さんしょうだゆう」だ。

 

福島(磐城)を出て行方不明となった父親を探す旅に出発した母と乳母、安寿と厨子王は佐渡の海で生き別れる。

 

子供たちとの再会を求め北海道に漂着したが、涙を流しすぎて盲目となり、畑の鳥追いに身を賎した。さらにサハリンへと北上し韃靼海峡を渡る。その途上に出会ったロシアへと移住する高麗人の男と出会い命運をともにし、カザフスタンの荒野へ。

 

いっぽう資本家による苦役と虐待を受け聾唖となったが、祈り続けながら入水した安寿。その犠牲死のおかげで奴隷労働から脱出した厨子王は、母を探して北へ向かうはずが、海路を失って韓国の済州島に流れ着いた。

 

それぞれの裡に鳴りやまぬ異郷の歌声。それらをまとめて導くのは日本海で離別の絶望で海に入水した乳母が転成した水の精の声とや舞だ。

 

夢から醒めた兄は妹を連れ、行方不明の父を探し、現代の東京、福島へとに向かう。人造湖を訪れた若い韓国人兄妹は異郷の島で生を終えた厨子王の子孫だった。

■ より詳しい内容や、歴史的背景、音楽文化は➡️書籍「ユーラシアの歌 原郷と異郷の旅」(河崎純/ぶなのもり)

 

■本作品をベースに作られた2枚のCD作品

 

音楽詩劇研究所公式ホームページ

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